2026年7月6日(月)、「地域交通法改正で何が変わる?交通空白解消に向けた改正ポイント解説セミナー」をオンラインにて開催しました。講師は、株式会社MaaS Tech Japan代表取締役CEOの日高洋祐氏。地域交通を取り巻く現状は年々厳しくなっており、自治体での関心も高まっています。今回は全国から70名超のお申込みがあり、2026年の地域交通法改正の背景や改正のポイント、自治体に求められる役割、今後の政策の方向性について、事例を交えながら解説いただきました。
冒頭では、人口減少や高齢化、運転手不足、燃料費や車両価格の高騰などを背景に、地域公共交通が構造的な危機に直面している現状が説明されました。バス路線の廃止や減便、交通事業者の赤字拡大などにより、本来必要な交通サービスが提供されない「交通空白」が全国各地で広がっています。
政府は令和9年度までに全国約2,500か所の交通空白解消を目標として掲げていますが、単に交通事業者だけで解決できる問題ではなく、自治体や地域全体で取り組むべき課題となっています。また、日本版ライドシェアや公共ライドシェアなど新たな制度も整備されていますが、それだけで課題を解決できるものではなく、地域の実情に応じた多様な交通手段を組み合わせることが重要であると説明されました。
地域交通法改正のポイントとは何でしょうか。2026年6月10日に公布された地域交通法改正では、「連携と協働」が法律の目的規定に明記され、交通政策の考え方そのものが大きく転換しました。講演では、自治体は交通事業者を支援する立場から一歩進み、「地域全体の移動を設計する主体」として制度上位置付けられたことが、今回の法改正の大きな特徴として紹介されました。

さらに、日高氏は、今回の法改正は交通部門だけの制度改正ではなく、「暮らしの基盤政策」への転換であると強調しました。地域交通は、医療・福祉・教育・観光・商業・防災など自治体のあらゆる政策分野を支える基盤であり、交通部局だけで課題解決を図ることには限界があります。そのため、多分野との連携による具体的な政策例が紹介されました。また、「交通空白」を可視化し、データに基づいて現状を把握することが、今後の政策立案の出発点になることも説明されました。
質疑応答では、参加者から活発な質問が寄せられました。「先進的に連携促進を進めている自治体の事例」「オンデマンドバスのメリット・デメリット」「人口5,000人以下の小規模自治体における広域連携の進め方」などです。日高氏からは、複数自治体の連携が推奨されることや、シェアサイクルなど複数の交通を組み合わせたフィンランドの成功事例を紹介しました。
そして、「『移動できる地域』は誰も取り残さない地域である」として、維持するための「赤字補填」から最適化するための「再構築投資」へ財政支出の質を変えること、議員が「翻訳者」となり、制度改正を生活課題の解決と自治体の行動につなげることを提案しました。
今回のセミナーでは、地域交通法改正を単なる制度改正としてではなく、「誰もが移動できる地域づくり」を実現するための政策転換として捉える視点が共有されました。地域交通は、福祉や教育、観光、防災、地域経済など幅広い分野を支える重要な社会基盤です。今回の法改正を契機に、自治体、交通事業者、民間団体、住民が連携し、それぞれの地域に適した持続可能な交通体系の構築が期待されます。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。


